日本の大学進学率は高いか低いかの話になるとこういう意見が出てくることがあるよね。
OECDによれば、日本の51%は、タイプAの進学率を指し、4年制大学への進学率を 意味する。ちなみにタイプB(大学以外の高等教育機関)の日本の進学率は27%である。一方、アメリカの「進学率」はタイプAとタイプBを分けてはいな い。タイプAの中にタイプBも含めて、それを進学率とし、74%としている。
日米の大学進学率が同じ土俵で比較されていないことはここから明らかである。日本のタイプAとタイプBを合計した高等教育進学率は78%(51%+27%)であり、アメリカの74%を上回ることになる。
(引用者注:文中の数値は2010年のデータに基づいたもの)
http://www.postsecondaryanalytics.com/us_highed_blog005/Wikiedia にも似たような数値が参考値として上げられている:
33位 54% 日本(通信制大学・放送大学および専修学校を含めた場合75.9%)日本の高等教育機関への進学率は実は7割以上や、という意見が。
(強調は引用者による)
この7割を超える数値は、OECD 統計のタイプAの進学率とタイプBの進学率を単純に足し合わせたもんや。この単純な足し算を、引用記事では、
もっともOECDは、単純にタイプAとタイプBの進学率を足すことはできないと警告し ている。タイプA及びタイプBの両方の機関に同時に集計されている学生も大勢存在する可能性があるからである。しかし、その警告は日本にはおそらく当ては まらない。これは自分の推測にしか過ぎないが、日本においては、専門学校から大学へ進学する学生数は少数であるだろうし、また短大から大学に編入する場合 は1年生としてではなく、大体が3年生からである(従ってOECDの新入生としてはカウントされない(1))。と正当化している。しかし、わしはこの足し算は誤っていると思う。
なぜかといえば、まず第一に、タイプBの専修学校には大学受験予備校も含まれているはずだからや。
もちろん、東進ハイスクールのような株式会社形態の予備校は含まれていないだろうが、河合塾を始めとする学校法人である予備校は法制上は専修学校の一種なので、統計上はタイプBに入っていることになる。
自治体が発表している資料には、きちんとその旨を注釈を入れている物だってある:
「専修学校等進(入)学者(B)」とは、専修学校の専門課程進学者、一般課程及び各種学校(予備校を含む)入学者
山口県の統計資料(PDF)
学校基本調査の統計では、昭和51年から専修学校等進学者が計上されているが、その割合は上昇している。しかしながら、統計上の扱いで、昭和56年からは進学準備校(予備校)に通う者も専修学校等進学率に計上されるようになり、専修学校等進学率の半数近くは浪人生である。
進学に関する県民意識の分析的研究(6p. 埼玉県立南教育センター PDF)受験予備校出身者を足し合わせるのはダブルカウントもいいところやろう。
もう一つダブルカウントしているものがある。 大学卒業(または中退)してから専門学校へ進学する層や。
グラフは、東京都専修学校各種学校協会が毎年調査している都内専門学校の入学者の学歴の内訳です。昼間部の学科で見てみると、「高校新卒者」の割合は 64.0%。かつては専門学校といえば高校新卒者の進路というイメージがありましたが、いまや学ぶ人の経歴はいろいろです。増えているのが大学や短大の卒業者や外国人留学生。
http://tsk-school.com/useful/4route02.html大体10%弱程度は大学卒業者や中退者が含まれていて、単純に足し算するとこういった人たちがダブルカウントされることになるね。
2010年の数値を元にして、この考えに基づいて足し算を多少ましなものとすると、
27 - 27*0.1 (大学卒業・中退者分) - 27*0.6*0.5 (高校新卒者の半分を予備校とみなす)
= 16.2
これを足して、67.2 % という感じになるかな?
「日本の25-34歳人口における学位保持者(2年以上の学位)の割合は、57%」だが、日本の大学卒業率を考えて、足し算の答えに8掛けぐらいにして比べてみると、いい加減な足し算の割には妥当そうな数値になっているような気がするな。
ということで、
結論から言うと、「大学」進学率としてではなく、「高等教育」全体の進学率で比較すると、日本の進学率は世界的に決して低くはない。少なくとも、アメリカと比較しても低くはないし、実はオーストラリアと比較しても、一般的に信じられているほどの差はない。という結論は誤っていると考える。
おまけ)
それから、日本のタイプBには学校法人の自動車学校とかも入っているはずなんだよね。あれが高等教育機関というべきかどうかは議論の余地があるやろね。諸外国の状況が分からないので、今回はその分の割引はせんかった。
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